6月0日 アイヒマンが処刑された日
最重要ナチス戦犯 アドルフ・アイヒマン 最期の日々 誰が、どうやってアイヒマンの遺体を火葬したのか?秘密裏に製作されることになった焼却炉プロジェクト。描かれることのなかった舞台裏を今、あなたが目撃する。
2022年 105分
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予告編
作品詳細
1961年。4か月に及んだナチス・ドイツの戦争犯罪人、アドルフ・アイヒマンの裁判に、死刑の判決が下された。リビアから一家でイスラエルに移民してきたダヴィッド(ノアム・オヴァディア)は、授業を中断してラジオに聞き入る先生と同級生たちを不思議そうに見つめていた。ホロコーストの恐怖を肌で知り、アイヒマンを憎悪するヨーロッパ系ユダヤ人と、近隣国から移民してきたアラブ人の間には複雑な歴史感情が横たわり、大人たちの微妙な温度差は子どもたちにも影響していた。 放課後、ダヴィッドは父に連れられて町はずれの鉄工所へ向かう。ゼブコ社長(ツァヒ・グラッド)が炉の掃除ができる少年を探していたのだ。ヘブライ語が苦手な父のためにと熱心に働くダヴィッドだったが、こともあろうか社長室の飾り棚にあった金の懐中時計を盗んでしまう。それはゼブコがイスラエル独立闘争で手に入れた曰く付きの戦利品だった。 居心地の悪い学校を抜け出し、ダヴィッドは鉄工所に入り浸るようになる。左腕に囚人番号の刺青が残る板金工のヤネク(アミ・スモラチク)や技術者のエズラ、鶏型のキャンディがトレードマークのココリコなど、気さくな工員たちはダヴィドをかわいがってくれる。ゼブコも、支払いのもめ事を解決してくれたダヴィッドに一目置くようになる。そんな時、ゼブコの戦友で刑務官のハイム(ヨアブ・レビ)が設計図片手に、極秘プロジェクトを持ち込んできた。設計図はアウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉。燃やすのはアイヒマン。工員たちに動揺が広がる。 アイヒマンを収監するラムラ刑務所では、死刑判決に所長やイスラエル警察の捜査官、ミハ(トム・ハジ)など関係者が頭を悩ませていた。法を遵守し、宗教にも配慮し、遺族には決して遺体を引き渡さない。様々な可能性を検討し、処刑直後にアイヒマンの遺体を所内で内密に火葬し、灰にすることが決定した。世界が注目する死刑は万難を排して執行せねばならない。ナチスの残党によるアイヒマン奪還や犠牲者の報復を警戒し、厳戒警備を行う刑務所には緊張の空気が流れ、最前線で警護するハイムも重責に神経を尖らせる。しかし、目の前の死刑囚は他人事のように、ベートーヴェンの「悲愴」を聴きながら煙草をくゆらせていた。 取調官としてアイヒマン裁判に出席し、ホロコースト体験を証言したミハはユダヤ協会主催のツアーに招待された。あの地獄を風化させない。強い思いを胸に、ミハは自分が殺されかけたゲットー跡地で参加者に過去を語り続ける。 アイヒマンの恩赦が却下され、5月31日深夜に死刑が執行されることが決定となる。急ごしらえの焼却炉はダヴィッドのアイデアで完成し、刑務所の中庭に設置された。火葬はゼブコの指名でヤネクが担当する。失敗は許されない一発勝負。6月0日、ついに遺体が炉に納められた。
スタッフ
[監督]ジェイク・パルトロウ[脚本]トム・ショヴァル/ジェイク・パルトロウ(C) THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP